《好き≠恋(日文版)》

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好き≠恋(日文版)- 第19部分


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「……クソッ」
 こんな状態ではどうにもならないと言うのに、思うように動かない体に舌打ちして歩は走り続ける。一刻も早く、家に帰らなければいけない気がしていた。ぐちょぐちょに濡れてしまった靴で、歩は真っ暗な道をひたすら走り続けた。
 家の前まで到着すると予想通り、家の中は真っ暗になっていた。ポケットから鍵を取り出して、歩はすべる指にもどかしさを覚えながら鍵を開ける。ドアを開けてびしょぬれになったままリビングへ行くと、真っ暗な部屋はシンとしていた。
「……健人?」
 名前を呼んでも、反応はなかった。雨音と、時折雷鳴の音が響いてくるだけで、部屋の中からは物音が一切しない。稲妻の光で部屋の中が照らし出されても、人影は無かった。
 歩はリビングの中に入り、濡れたかばんをその場に置いた。髪の毛から滴ってくる水滴を右手でぬぐい、額に張り付いた前髪をかき上げる。ぐっしょりと濡れた髪の毛はかき上げただけでも、かなりの量の水が溢れてきた。
 雨音が空間を支配している。暗いリビングに健人の姿は見えない。部屋に居るのだろうかと、階段へ続く扉の前に移動したとき、窓の外から雷の光りが差し込んできた。それに続いて、雷鳴が聞こえてくる。
「……っ!」
 漏れるような声が聞こえて、歩は振り返る。ソファ斡绀硕驻盲皮い肴擞挨虬k見して、それに近づいた。
 ソファ韦趣长恧匦肖取⒔∪摔渐榨々‘と家の壁の隙間で蹲っていた。膝を抱えて座っているせいで表情は分からないけれど、尋常ではないぐらい震えているので怖がっていることは一目瞭然だった。
「健人!」
 小刻みに震えている健人の肩を掴むと、悲鳴が耳を突いた。パニックに陥っている健人は目の前に居るのが歩だと気づかずに、伸ばした手を振り払う。雷が鳴ると驚くように体を震わせて、自分のひざを抱え込んだ。雷が鳴ることなんて今までたくさんあったはずだ。そのたび、健人はこうして一人苦しんでいたのだろうか。こんなに暗い部屋で、誰も怖がっていることに気づいてもらえず、雨がやむのをこうして待っていたのだろう。そう思ったら居た堪れなくなった。
 歩は膝をついて震える体を、包み込むように抱きしめた。
「……な」
 いきなり抱きしめられた健人は、何が起こったのか分からなかったが、縋るように濡れている腕を掴む。目の前に差し出された手に、縋らずには居られなかった。怖すぎて泣くこともできず、恐怖だけが頭の中を支配していた。
 雷は嫌いだった。
 大きい音と、いきなり光る稲妻が、とても怖かった。小さいころ、一人でいることが怖いから電気をつけていたのに、雷が落ちたせいで停電し、辺りが真っ暗になってしまった。すると頭の中で一気に怖いことが思い浮かんで、それらが襲い掛かってくる。それが物凄く怖かった。怖くて堪らなかった。こんなにも怖がっているのに、誰も助けてはくれなかった。
 健人にとって、それが一番、怖かった。
「大丈夫だから」
 優しい声が聞こえて、健人はゆっくりと息を吐き出した。まだ、抱きしめてくれているのが歩だと分かっていなかったが、優しい声は耳から脳へと響いてきた。濡れていて冷たいはずなのに、抱きしめてくれている体はとても温かくて、心地よかった。雨の音も、雷の音も、遠ざかっていく。
 少し硬くてごつごつとした手が、背中を優しく撫でる。大丈夫だからと耳元で囁かれて、心拍数もようやく元通りへと戻っていく。
 やっと、怖がっていることに気づいて助けてくれた。そのことに安堵した健人は、ようやくパニック状態から抜け出すことができて、現状を把握する思考を取り戻した。
 健人は少し顔を上げて、抱きしめている歩の顔を見る。2、3度瞬きをして、目の前に居るのが本当に歩なのかと自分の目を疑った。雨に濡れたのか、髪の毛や服はびしょぬれになっていて、いつもとは摺﹄儑鞖荬馈1Г筏幛椁欷皮い毪长趣恕ⅳ胜激訍櫎媳Г胜盲俊
「……あ、ゆむ……?」
 恐る恐る声をかけると、ゆっくりと体が離れていった。健人の顔を覗き込み、落ち着いているのを見ると「大丈夫?」と今度は確認するように尋ねてきた。
「え、あ……、うん」
 どう返事をして良いのか分からず、健人は頷くだけ頷くと歩は健人の頭を撫でて「良かった」と笑った。今まで見たことの無い、歩の笑顔に健人は固まった。へらへらしているわけでもなく、無理をして笑っているわけでもない、クラスメ趣艘姢护皮い毪瑜Δ收瘠辘蓼い啃︻啢扦猡胜ぁ=∪摔坤堡讼颏堡啃Δ撙坤盲俊
 電気が復旧したのか、パパッと何度か点滅した後、リビングに灯りが点いた。間近にいる歩の顔をじっと見つめて、どうしてここにいるのかと考えたが、理解できなかった。そして、なぜ、あんなふうに抱きしめたのかも分からない。雷が鳴り始めて、轟音とともに停電したところまでは覚えているが、歩が帰ってきたことなど覚えていなかった。
「……雷、苦手だったんだね」
「え……?」
「あんまり、無理しないほうがいいよ。じゃ、俺、風呂入ってくるから」
 歩は目も合わさずにそう言うとすぐに階段を上がって行ってしまった。何が起こったのか分からず、健人はその場に座り込んだまま、きょとんとしていた。濡れた体に抱きしめられたせいで、服が濡れて冷たいはずなのに、パニックに陥ったときと同じように心拍数が上がっていき、体が熱くなってきた。
 助けてくれた理由が分からない。嫌いだと言って、2ヶ月以上口すら利いていなかったと言うのに。かなり嫌っていたはずなのに、こんなことをされて気持ち悪いとも思わない自分の感情に、健人は戸惑っていた。
 それは歩も、同じだった。
 階段を駆け上がり、自室へ入ると同時に大きく息を吐き出す。雨が降り始めて、雷が鳴り、健人が怖がっているのではないかと思ったら我を忘れたように走り出していた。蹲って震えている健人を見たら、放っておけなかった。嫌っていて、顔も見たくない、口も利きたくないと思っていたのに、どうして抱きしめてしまったのか自分の行動が分からなかった。
「……何、してんだ。俺は……」
 部屋の扉に凭れて、ずり落ちていく。恐る恐る名前を呼ばれた声が忘れられない。
 健人が、名前を呼ぶのは、初めてのことだった。落ち着かない鼓動を抑えるように、歩は自分の胸を握り締めた。
ようやく雨もやみ、心拍数が落ち着いてきた頃、濡れた服にク椹‘の風が当たり健人は身震いした。抱きしめられただけでこんなにも濡れてしまったのだから、歩はもっと濡れていたんだろう。たまたま外に居るときに雨が降ってきてしまったのか、それとも健人が怖がっているのを知って、雨が降っている中を帰ってきたのかどうかは分からない。けれど、大丈夫と言って宥めてくれた声が忘れられなかった。
 このままでは風邪をひいてしまうと思い、健人は立ち上がった。部屋に向かおうとして階段の近くに行くと、びしょぬれになったカバンが放置されていた。それは紛れも無く歩のもので、こんなところに放置していても邪魔なだけだ。片付けようとして、伸ばした手が止まる。勝手に片付けたりなんかしたら、歩は機嫌を悪くしそうだ。しかし、気づいてしまった以上、放置しておくのも気が引けてどうすればいいのか分からなかった。
 階段から降りてくる足音が聞こえ、健人はとにかくこの場から立ち去ろうとソファ貞搿%譬‘ブルの上に置いてあるリモコンを手に取り、テレビをつけた。それと同時ぐらいに扉の開く音が聞こえて、心臓が飛び跳ねた。
「ねぇ、健人」
 普通に話しかけられ、健人は振り向く。どう返事をして良いのか分からず、声を出すことができなかった。歩はまだ服を濡らしたまま、着替えを持って立っている。ぽたぽたと服の裾から落ちている雫が水溜りになっていた。
「ご飯ある? 俺、腹減ってんだけど」
 先ほどと変わらない声音に、健人は戸惑い、どう返事をして良いのか分からなかった。けれど、聞かれているのに無視をすることはできず、健人は口を開いた。
「……要らないんじゃなかったのかよ」
 いつも通り話しかけてきてくれた歩にそんな無愛想なことを言ってしまい、健人は後悔した。こんなことを言いたかったのではない。作ればあるとか、そんなこと言いたかったのに、思いとは裏腹に出てきた言葉は冷たいものだった。これではまた、仲が険悪になってしまうと思い、健人は俯いた。
 無愛想な声に、歩は少し笑った。
「ちょっとさ、意地張ってたんだよね。友達のとこ、泊まりに行く予定、無かったんだ」
「……え」
「それにこんなびしょぬれで友達のところにもいけない。だからさ、あるなら作ってよ。昼からなんも食べてないんだ」
 困ったように笑う歩を見て、余計に居づらくなった。ひどいことを言った自覚はあり、またも険悪な状態になってしまうと懸念していたのに、歩はそれ
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